皆さんは日常生活で「しづらい」という言葉を使うことがありますか？
「スマートフォンの操作がしづらい」や「椅子が座りにくい」といった表現、よく耳にすると思います。
しかし、この「しづらい」と「しずらい」、どちらの表記が正しいか、迷うことがありませんか？
特にビジネスメールや公式の文書に使う時には、どちらの表記が適切か気になる部分ですよね。
この記事では、「しづらい」と「しずらい」の表記について、違いや正しい使い方を例を挙げて、優しく解説していきます。
「しづらい」と「しずらい」の違いと、なぜ「しづらい」が正しいのか
正しい表記は「しづらい」です。
「しづらい」は元々「し辛い」という表現からきており、「辛い」をひらがなで表記すると「づらい」となります。
この表記の背後には、日本語特有の「連濁」という現象が関わっています。
連濁とは、二つの言葉が組み合わさると、後ろの言葉の最初の音が濁る現象です。
これにより言葉が自然に聞こえ、発音しやすくなります。
例として、二つの言葉「手」と「紙」が合わさると「手紙（てがみ）」となり、「言葉」と「遣い」が合わさると「言葉遣い（ことばづかい）」となります。
同様に、「鼻」と「血」は「鼻血（はなぢ）」となり、「物」と「語」は「物語（ものがたり）」となり、「雨」と「傘」は「雨傘（あまがさ）」となり、「花」と「火」は「花火（はなび）」となります。
このように、「する」と「つらい」が一緒になることで、「つらい」の部分が「づらい」と濁り、「しづらい」という形になるわけです。
日本語におけるこの連濁現象は、日々使う多くの言葉に影響を与えており、言葉の響きを豊かにしています。
「しずらい」という表記が見られる理由
最近、「しずらい」という表記をよく目にするようになったのは、1986年に制定された現代仮名遣いのルール変更が影響しています。
このルールでは、一部の「づ」の音を「ず」と表記するように変更されました。
例として、「続く」が「つづく」から「つずく」へ変更されたり、「近づく」が「ちかづく」から「ちかずく」へと変更されるなど、多くの言葉がこの変更に影響を受けています。
このような流れの中で、「しづらい」も場合によっては「しずらい」と表記されることがあります。
ただし、正しい表記は「しづらい」です。
特に公式な文書やビジネスの場面では、正しい表記を使用することが重要です。
取引先へのメール、企画書や報告書、プレゼンテーション資料、議事録、社内文書など、ビジネスシーンで重要な文書や、履歴書、職務経歴書、各種申請書類、契約書、学術論文、公文書などの公式な文書で「しづらい」という表記を心がけましょう。
「しづらい」を活用する日常のシナリオ
「しづらい」という言葉は、何かを行う際に感じる困難さや不便さを表現するのに役立ちます。
さまざまな状況でどのように使うか、いくつかの例を見てみましょう。
職場での例
- 「締め切りが迫っており、集中するのがしづらい環境です」
- 「オフィスがうるさくて、電話応対がしづらいです」
- 「資料が多くて、整理するのがしづらいです」
- 「部下へのフィードバックをするのがしづらい雰囲気です」
- 「在宅勤務で、同僚と連絡を取るのがしづらい」
- 「狭い会議室で資料を広げるのがしづらいです」
- 「システムの不具合で業務を進めるのがしづらい状態です」
- 「クライアントとの会議で、率直な意見を言い出しづらかったです」
私生活での例
- 「新しく買った靴で歩くのがしづらいです」
- 「マスクをしていると、はっきり話すのがしづらいですね」
- 「日差しが強くて目を開けるのがしづらいです」
- 「満員の電車で、荷物を持つのがしづらいです」
- 「人でいっぱいのレストランで、ゆっくり食事をするのがしづらい雰囲気でした」
- 「友人にお金の話を持ちかけるのがしづらいです」
- 「体調がすぐれなくて、外出するのがしづらいです」
- 「雨の日は洗濯物を干すのがしづらいです」
これらの具体例から、「しづらい」という表現がどのように使われるかを理解し、日常生活や職場で適切に活用できるようになりましょう。
「しづらい」という表現を用いた心理的な障壁の表現方法
「しづらい」という言葉は、物理的な困難だけでなく、心理的な障壁や精神的な負担を伝えるのにも適しています。
日常生活やデジタルコミュニケーションで、感じる不便さや抵抗感を表す際に活用されます。
対人関係の中では、デリケートな話題を話し始めることがしづらかったり、先輩に対して意見を述べるのが難しかったりすることがあります。
また、親に相談しづらい問題がある場合や、友人の結婚式に参加するのが難しい理由がある場合も「しづらい」という表現が使えます。
上司に休暇を申し出るのが難しい空気がある場合、同期に自分の昇進を伝えるのが気まずいと感じることや、転職の意向を現在の上司に話すのがしにくい状況もあります。
親しい友人に金銭を借りることが頼みづらいと感じることも、「しづらい」で表現できます。
SNSの使用では、炎上を恐れて投稿を控えることや、友人の投稿に対して肯定的な反応を示しにくい内容だった場合に「しづらい」が使われます。
個人的な意見をSNSに投稿することや、敏感なトピックにコメントするのが難しい場合、知人をSNSでフォローするのに躊躇する理由がある時や、自分の趣味に関する内容を投稿しにくいと感じる時にも適用されます。
デジタル時代におけるコミュニケーションでは、オンライン会議で相手の声が聞き取りにくかったり、チャットでの意図が伝わりにくかったりすることがあります。
ビデオ通話では相手の表情が判断しにくいことや、リモートワークでのカジュアルな会話が生まれにくいこと、オンライン飲み会での盛り上がりにくさ、ビデオ通話での詳細な説明が行いにくい場面があります。
リモート環境でのチームビルディングが進めにくい、画面共有時の資料が見にくいといった問題も存在します。
デジタルデバイスの使用においても、「しづらい」は有効です。
スマートフォンで小さな文字を読むのが困難であること、タブレットを使った長文の入力がしにくいこと、新しいアプリケーションの操作に慣れるのが難しいこと、デジタル書籍の読みにくさやオンラインショッピングでの商品選択の難しさ、電子決済の使用が面倒であることなどが挙げられます。
これらのシナリオを通じて、「しづらい」という言葉がどのように心理的な障壁を表現するのに役立つかが理解できるでしょう。
日々のコミュニケーションにおいてこの表現を適切に使いこなすことで、感じている障壁を効果的に伝えることが可能です。
「しづらい」という表現の使い方と注意点
「しづらい」という表現を上手に使うために、いくつか大切なポイントがあります。
この言葉は「しずらい」と書くことが一般的に誤用とされているため、正しい「しづらい」という表記を使うようにしましょう。
この表現は、単に物理的な障害を示すだけでなく、心理的な障壁や精神的な負担を表す際にも幅広く活用できます。
特に公式の文書では、正確な表記を心掛けることが重要です。
デジタル化が進む現代では、「しづらい」という言葉の使用範囲も広がりを見せています。
ビジネスシーンでは、適切な表記と使い方が信頼性を築くうえで特に重要になっています。
さらに、この言葉は心理的な障害を表すのにも役立ち、新しい使用例が次々と生まれています。
また、「しづらい」という表現はネガティブな意味に限らず、配慮や謙遜を示す場合にも用いられます。
えば、「申し上げづらいのですが」といったフレーズは、相手への配慮を表現する丁寧な使い方として頻繁に使われます。
まとめ
適切な日本語を使うことは、ビジネスパーソンとしての基本的なスキルの一つです。
特にビジネス文書では、正しい表記を用いることが、プロフェッショナルとしての自身の信頼性を高める助けとなります。
日常のコミュニケーションにおいても、「しづらい」という表現を場面に応じて適切に使い分け、効果的にコミュニケーションを図ることが大切です。
